CBT試験の増加希望|受験機会の拡大と技術者不足対策としての意義

CBT試験の増加希望|受験機会の拡大と技術者不足対策としての意義 近年、さまざまな資格試験においてCBT(Computer Based Testing)方式が導入されるケースが増えている。従来の「年1回・特定日・限られた会場」での受験スタイルから脱却し、「いつでも・どこでも・何度でも」とまではいかなくとも、柔軟な受験機会が得られるCBT方式への移行は、受験者にとって非常に大きな変化である。 IPA試験の先進的なCBT導入 代表的な事例として、情報処理推進機構(IPA)によるCBT化の進展が挙げられる。2011年にITパスポート試験でCBT方式が導入された。さらに2023年からは、基本情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験でも通年CBT受験が可能となった。 これにより、受験者は特定の試験日に縛られることなく、自身のスケジュールに応じて受験計画を立てることができる。技術職に就く社会人にとって、繁忙期を避けたり、学習の進捗に応じて柔軟に受験時期を調整できる点は極めて有利である。 電験三種もついにCBT化 「紙の国家試験」の象徴とも言える**第三種電気主任技術者試験(電験三種)**も、2023年度からCBT方式を導入した。この変化は非常に画期的である。 まず、年1回だった試験が年2回に増加した。さらに、従来は1日で4科目(理論・電力・機械・法規)を連続して受験しなければならなかったが、各科目を別日に分けて受験可能となり、精神的・身体的負担が大幅に軽減された。試験会場も全国約200箇所に拡大され、地方在住者の移動負担も緩和されている。 CBT導入の背景には、少子化による技術者不足への対応という側面もあったと推測する。インフラを支える電気系技術者の需要は今後ますます高まるが、試験のハードルが高く、また、採点の労力も高いままでは人材確保は困難である。CBT化は、技術者の裾野を広げる施策としても重要な役割を果たしている。 知的財産管理技能検定も全国展開へ 注目すべきもう一つの例は、**知的財産管理技能検定(知財検定)**である。2024年7月の第48回試験より、2級および3級にCBT方式が導入された。これにより、全国のテストセンターで受験が可能となり、これまで都市部に偏っていた受験機会が全国に広がった。 知財検定は、企業の研究開発部門や法務部門で重視される資格でありながら、地方在住者にとっては受験の機会が限られていた。CBT化によって、地方企業の社員や学生にとってもアクセス可能な試験となった点は高く評価できる。 CBT化は単なるデジタル化ではない CBT方式の導入は、単なる「紙からパソコンへの移行」にとどまらない。それは受験制度全体の設計思想をアップデートする機会でもある。受験者の多様なライフスタイル、地理的条件、学習ペースに対応する柔軟な仕組みが求められる現代において、CBTは最適な試験形態であると言える。 今後さらに多くの試験でCBTが導入され、「思い立ったときに受けられる資格試験」が当たり前になる社会の実現を期待したい。 IBT方式への期待と筆者の今後 加えて、CBTと並んで注目されるのがIBT(Internet Based Testing)方式である。これは自宅などからインターネットを通じて受験できる方式であり、試験会場への移動さえ不要となる。本人確認やカンニング防止の仕組みが整えば、さらに幅広い資格に導入されていく可能性がある。 筆者自身は、CBT試験は複数回受験しているが、IBT試験はまだ未経験である。今後、IBTによる受験環境が整えば、さらなる受験のしやすさを体験したいと考えている。 ところで、色彩検定はいつになったらCBT化してくれるのか。マークシート方式というだけで、今や受験する気が失せるこの頃である。

May 13, 2025 · 1 min

6割取る学習の是非

6割取る学習の是非 試験において、合格基準が「6割」とされていることは多い。たとえば応用情報技術者試験、電験三種、大学の単位認定など、さまざまな分野の試験で「60点以上で合格」という基準が設けられている。この数値を見たとき、多くの受験者がこう考えるだろう。 「じゃあ、6割を目指して学習すればいいんだ」 これは一見合理的な戦略に見える。最小限の努力で最大の成果を得るという発想だ。しかし実際には、この「6割取る学習」は、きわめて危うい戦略である。以下、その理由を述べていく。 点数は常にぶれる 試験というのは、運や環境要因、当日の体調、緊張など、様々な外的要因に左右される。試験本番で「持っている実力のすべてが出せる」人間はごく少数であり、むしろ本番では「実力の8割程度しか出せなかった」と感じる人が大半である。 このとき、**知識として8割を習得していれば、当日の実力が8割しか出なくても、0.8×0.8=0.64で64点となり、6割合格基準を超える。**これはあくまで感覚的なモデルにすぎないが、非常にわかりやすい安全圏の設計方法だと言える。 参考書に書かれる「6割取れ」への違和感 世の中には、「試験は6割取れればいいのだから、6割を目指して効率よく学習しよう」と書いてある参考書や講義が少なくない。しかし筆者にとって、そのような発想は違和感がある。 確かに、全体の学習量を抑えて早く試験勉強を終わらせたいという気持ちは理解できる。実際、「満点を目指して時間切れで全範囲を終えられなかった」という受験者もいるだろう。そうした受験者への反省として、「6割取れればいい」という指導方針が現れたのかもしれない。 しかしながら、「試験範囲全体を学習する」ことは大前提であり、それをやった上で「8割程度を目指す」ことは、むしろ標準的な構えだと考える。 学習量の差はそこまで大きくない 筆者の考えでは、難関資格(弁護士、医師など)を除けば、「6割を目指す」学習と「8割を目指す」学習の間には、せいぜい2〜3割程度の学習量の差しかない。たとえば学習期間が2ヶ月だとしたら、それに+2週間ほどで到達できる範囲である。 その程度の差で「合格の安定性」を買えるのならば、次回の受験まで1年待つリスクと比較しても、明らかに前者のほうが合理的ではないだろうか。 「6割でいい」は甘えか、それとも戦略か? もちろん、すべての人にとって「8割を目指す学習」が常に正しいとは限らない。人生には時間的・経済的制約があるし、「まずは合格ラインに達すること」を最優先とする戦略もあり得る。 しかし、試験の本質は「知識・技術を身につけたことの証明」である。合格ラインぎりぎりの学習では、試験後の実務や応用に耐えられない可能性がある。 受かるための学習ではなく、合格後に役立つ学習を心がけるならば、なおさら8割を目指す意味は大きい。 資格試験は「戦略ゲーム」のように見えて、実は非常に“誠実さ”を問われる営みだ。合格という結果を安定的に手にするためにも、「6割でいい」ではなく、「8割を取る」という姿勢で取り組むことを、ぜひおすすめしたい。 なお、筆者自身もこの「8割習得」を基本方針としているが、それでもうまくいかないことはある。たとえば知財検定2級はその代表例である。この資格は、そもそも合格基準が8割という非常に厳しい試験であり、筆者は過去問で9割5分正解できる状態まで学習を仕上げたものの、本番では**77.5点(1問2.5点)**を取り、たった1問の差で不合格となってしまった。 このように、「+2割」を目標とする学習には、それ相応の覚悟と精度が求められる。戦略としては妥当でも、現実には困難を伴うこともある——それでもなお、「8割を目指す」という姿勢こそが、長期的な実力の安定に通じる道だと信じている。

May 12, 2025 · 1 min