情報処理安全確保支援士の罰則は重すぎる?|他士業との比較と検証

情報処理安全確保支援士の罰則は重すぎる?|他士業との比較と検証 はじめに|罰則がある資格って怖くない? 情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)には、守秘義務違反に対して「懲役または罰金」の罰則があります。 この点を不安視する声もありますが、他の士業や法律と比べて特段厳しいわけではありません。 本記事では、支援士に課される罰則の内容とその背景、他制度との比較を通じて、登録の可否を判断するための視点を整理します。 情報処理安全確保支援士とは 情報処理推進機構(IPA)が認定する国家資格は、有名なものとして、ITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者などがあります。これら資格は難易度としてスキルレベルが設定されており、ITパスポートはスキルレベル1、基本情報技術者はスキルレベル2、応用情報技術者はスキルレベル3と区分されています。この辺は、ITに携わる方は常識としてご存じでしょう。 ※情報処理推進機構(IPA)より引用 この区分の中で、最高難易度のスキルレベル4に設定されている資格の1つに、情報処理安全確保支援士試験というものがあります。他のスキルレベル4の試験とは異なり、登録制があるとか、士業として名乗れるとか、色々と特殊性があるのですが、特殊性の1つに、法律上罰則が規定されており、インターネットで本試験について調べても、この罰則についてネガティブな意見が散見するため、罰則について詳細を検証しようと思います。 なぜ罰則が話題になるのか? 「懲役」や「罰金」という言葉はインパクトがあり、ネット上でも支援士資格のリスクとして強調されることがあります。 特に「独占業務がないのに罰則だけある」という誤解が、不安を助長しているようです。 情報処理安全確保支援士の罰則について まずは該当の法律について、原文を引用します。 情報処理の促進に関する法律 第25条(秘密保持義務) 情報処理安全確保支援士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。情報処理安全確保支援士でなくなつた後においても、同様とする。 ここだけ読むと、(少なくとも前文は)「まぁ、常識でしょ?」という印象ですが、問題は次になります。 情報処理の促進に関する法律 第59条 第25条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 何やら懲役・罰金などという、恐ろし気な文言が書かれていますね。 不安の声の実例 この条文に対して、インターネット上ではネガティブな意見が散見します(以下引用)。 情報セキュリティという特性上、企業機密や営業機密に触れないことはないため、たとえ重過失だとしても罰則を受ける可能性があるのは大きなリスクとなります。(中略)独占業務がない状況下でリスクのみ抱えるのはセキュリティの専門家としてリスク受容できかねる 出典:https://zenn.dev/tk88e/articles/123b6090cdcfe6 より引用 資格を持つデメリットがある(中略)情報処理安全確保支援士には罰則があり、罰金刑・懲役刑を受ける可能性があります。秘密保持義務違反などを行った場合、有資格であるために刑罰に処される場合があります。 出典:https://qiita.com/Umazular/items/f656dff9a10f9f3c94ad より引用 これら2つの例では、情報処理安全確保支援士にせっかく合格・登録した専門家が、罰則を理由の1つとして自ら登録削除の申出をする、という事態にまで陥っています。 他の法律・資格と比較した罰則 不正競争防止法 第21条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 「次の各号のいずれかに該当する場合」はややこしいので省略しますが(ここでは秘密漏示した場合と認識してください)、着目して欲しいところは、「十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という箇所です。明らかに情報処理安全確保支援士の罰則よりも厳しいですよね。 その他士業の秘密保持義務との比較 医師、弁護士、弁理士、行政書士、税理士、公認会計士など、士業の名前が付くものについては、詳細は別記事に秘密保持義務をまとめてみました。 各士業の守秘義務一覧 結論:情報処理安全確保支援士の罰則は特段厳しいわけではない 情報処理安全確保支援士の守秘義務違反には、 **「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」**という刑罰が規定されています。 この罰則を見て「怖いから登録しない」と感じる人もいますが、 他の専門職と比較すると、必ずしも特段厳しいとは言えません。 他制度との比較 資格・制度 罰則内容 情報処理安全確保支援士 1年以下の懲役 or 50万円以下の罰金 医師・弁護士など(刑法) 6か月以下の懲役 or 10万円以下の罰金 行政書士 1年以下の懲役 or 50万円以下の罰金 弁理士 1年以下の懲役 or 100万円以下の罰金 不正競争防止法違反(営業秘密漏洩) 10年以下の懲役 or 2,000万円以下の罰金 想定される質問(FAQ) Q. 支援士資格を持っているだけで逮捕される可能性がある? A. ありません。守秘義務違反がなければ問題なく、業務の範囲や注意点を理解していれば十分対応可能です。 ...

May 6, 2025 · 1 min

各士業の守秘義務一覧

各士業の守秘義務一覧 情報処理安全確保支援士の罰則に関する以下記事を作成した際、他の士業についても、同程度の罰則があるということを示すため、様々な法律を調べました。その結果を一覧として公開します。 情報処理安全確保支援士の罰則は重すぎる?|他士業との比較と検証 不正競争防止法 不正競争防止法 第21条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 情報処理安全確保支援士 情報処理の促進に関する法律 第25条(秘密保持義務) 情報処理安全確保支援士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。情報処理安全確保支援士でなくなつた後においても、同様とする。 情報処理の促進に関する法律 第59条 第25条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 医師・弁護士 医師法 第17条の3 前条の規定により医業をする者は、正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。同条の規定により医業をする者でなくなつた後においても、同様とする。 弁護士法 第23条(秘密保持の権利及び義務) 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。 但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 刑法 第134条(秘密漏示) 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 刑法 第135条(親告罪) この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 行政書士 行政書士法 第12条(秘密を守る義務) 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。 行政書士法 第22条 第十二条又は第十九条の三の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 弁理士 弁理士法 第30条(秘密を守る義務) 弁理士又は弁理士であった者は、正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。 弁理士法 第80条 第十六条の五第一項、第三十条又は第七十七条の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 税理士 税理士法 第54条(税理士の使用人等の秘密を守る義務) 税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者でなくなつた後においても、また同様とする。 税理士法 第59条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 三 第三十八条(第五十条第二項において準用する場合を含む。)又は第五十四条の規定に違反したとき。 2 前項第三号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 公認会計士 公認会計士法 第27条(秘密を守る義務) ...

May 5, 2025 · 1 min