ドメインは資産となるか──相続と税制の未来を見据えて

ブログを運営する中で、独自ドメインを取得・運用している。その過程でふと気になったのが、「このドメインは将来、相続の対象になるのか?」「資産として課税される可能性があるのか?」という問いだった。この記事では、現時点の状況と将来的な制度の変化について考察する。 ドメインの現在地──まだ“資産”ではない 2025年現在、ドメインは法律上「相続財産」として明確に定義されているわけではない。Whois情報を変更すれば形式的には譲渡可能であり、相続時にも無償で名義変更されるケースが多い。 ただし、現実にはvoice.comのように数億円単位で取引された事例も存在し、一定の経済的価値があることは否定できない。にもかかわらず、税務上はその価値を評価するルールが整っていないのが現状である。 予測される未来──ドメインは“デジタル不動産”になるか? 1. 相続財産としての認定 今後、著名ワードや短い文字列、高トラフィックを持つドメインが、相続財産に含まれるのは時間の問題だろう。たとえば「祖父の代に取得した家業ドメイン」が「デジタル家系資産」として扱われる未来が来るかもしれない。 2. ドメイン地主と“地代”モデル ブランド性の高いドメインを、企業が賃借して使う「ドメイン地主化」も現実味を帯びてきた。すでに商用利用においてドメイン貸与ビジネスは存在しており、「ドメイン代」は将来的に“地代”のような存在になる可能性がある。 3. 税制上の課題と整備 ドメインに経済的価値があることが社会的に認知されれば、相続税や法人税の対象として制度整備が進むだろう。数十年後には、現行の「評価不能」という前提が崩れると予想される。 4. 法制度との交錯──不正競争防止法と民法の衝突 現行では、著名企業名を含むドメインの第三者取得に対し、不正競争防止法が適用されることもある。しかし、今後ドメインが「登記財産」に近い存在と見なされれば、「先に正当取得した者が保護される」流れが強まるだろう。 結果として、企業によるドメイン回収請求が「後出しの財産権侵害」として退けられるケースも増えるかもしれない。 現時点での対応──今できることは何か 筆者は、すでにいくつかの価値ある独自ドメインを保有しており、以下のような対応を取っている: Whois情報やレジストラアカウントを明確に管理 所有ドメイン一覧を記録・棚卸 他者への譲渡や貸与を前提とした契約・名義変更の手順を文書化 これらは、ドメインを“資産”と位置づけるうえで、重要な備えとなる。 おわりに──ドメインは現代の「表札」である ドメインとは単なる技術的識別子ではない。ブランド、屋号、信用、事業の顔であり、時には個人のアイデンティティでもある。将来的に、ドメインは「家紋」や「土地」と並ぶ資産カテゴリーに分類される可能性が高い。 制度が整備される前に、自らの手で適切に取得・管理すること。それが、未来の“デジタル地主”としての第一歩である。

2025年7月9日