静的サイトはSDGsに貢献する|環境と知識と技術の三方良し
はじめに:Web技術と持続可能性の交差点
近年、Webサイトの構築方法として「静的サイト生成(SSG)」が注目を集めている。これは、ページを事前に生成し、サーバーへの負荷を軽減する手法だ。一方で、持続可能な開発目標(SDGs)への関心も高まっており、環境への配慮が求められている。本記事では、静的サイトがどのようにSDGsに貢献し、環境、知識、技術の三方良しを実現するかを探る。
静的サイトの環境への利点
サーバー負荷の軽減
静的サイトは、ページをビルド済みで配信するため、アクセスのたびに処理を走らせる必要がない。これは、動的生成型のPHPサイトなどと対照的であり、サーバーの消費電力や負荷を大幅に軽減できる。サーバー台数の削減にもつながるため、結果的にCO₂排出の削減に貢献する。
CDNとの相性の良さ
SSGはCDNとの親和性が高く、ユーザーの地理的位置に応じた効率的な配信が可能になる。データ転送の効率化により、ネットワーク全体の負荷とエネルギー消費を抑えられる。
知識の持続可能な共有
長期的なアクセス性の確保
動的CMSやデータベースベースのWikiは、サービス終了やデータベース障害に弱い。一方、静的サイトはMarkdownなどのプレーンファイルとして手元に保管でき、WebページもHTMLとしてそのまま保管できる。これにより、知識資産の長期保存が可能となる。
検索性とリンク性の向上
静的サイトでは、意味のあるURL(例:/dictionary/torque
)を付けることができ、検索エンジンや人間にとっても扱いやすい。これは知識を引用・展開するうえで非常に重要であり、学術・教育サイトにとっては死活問題である。
技術的な利点と持続可能性
セキュリティの向上
動的サイトはサーバーサイドで処理が発生するため、XSSやSQLインジェクションなどの攻撃リスクがある。SSGは基本的にHTML配信のみなので、攻撃面が極端に少ない。これは保守性にも直結する。
メンテナンスと運用コスト
構成がシンプルなため、開発者・編集者にとっても扱いやすい。更新もローカルで行い、Gitで管理するようにすれば、チームでの共同編集も安全かつ再現性の高いものになる。
世の中的な動きとエビデンス
Google:Core Web Vitalsの導入
Googleは検索ランキングにおいて「Core Web Vitals(LCP, FID, CLS)」といったWeb表示性能指標を導入しており、軽量かつ高速なサイトは明確に優遇されている。
将来への展望:Webサービスとエネルギー効率の評価へ
現時点では、Webサイトのエネルギー効率やCO₂排出量を評価する制度が浸透していないように思える。しかし、現在の社会ではすでに、サプライチェーン全体でのCO₂排出量算出や削減の取り組みが物質分野・エネルギー分野で加速している。
その中で、Webサービスにおける無駄なサーバー稼働による電力消費が評価の対象外であることは、いずれ問題視されるだろう。静的サイトへの移行は、この点でも社会的に評価される流れが生まれる可能性がある。
いまはまだ広く認知されていないが、将来的には「エネルギー効率の良いWeb設計」が、調達基準や社会的評価の対象になるかもしれない。
静的サイト運用の必要性を、実際の公共系サイトの構成から問題提起した例として、以下の記事も参照してほしい。というか、この記事のアイディアは、以下記事を書いている際に思い付くに至った。
結論:静的にしていくことは“正しさ”である
静的サイトは、単に「高速で安全」なだけでなく、環境負荷を減らし、知識の流通と保存を支える技術である。将来的に社会がこの方向に進まざるを得ないのは、「大衆が馬鹿じゃなければ」必然の流れだ。
技術者として、情報発信者として、静的にすることは正義である。