10年前、「Webサイトを作るならWordPressだよ」と誰もが口を揃えて言っていた時代があった。管理画面が整っていて、テーマもプラグインも豊富、何よりレンタルサーバーに「3クリック」で導入できる。その利便性に惹かれて、当時は多くの個人・企業がWordPressを採用していた。

だが、2020年代も半ばに差し掛かり、改めて情報発信を始めようとしたとき、様子が違うことに気づく。「WordPress セキュリティ」で検索すると、出てくるのは不安を煽る記事ばかり。脆弱なプラグイン、放置されたテーマ、改ざん被害、管理画面への攻撃……。10年前の「常識」が、今やリスクの温床と化していたのだ。

CMS構成の「構造的な欠陥」

WordPressを始めとする従来型CMSの最大の問題点は、「表示」「管理」「生成」という3つの役割を1つのサーバーでまかなっている点にある。管理画面は公開URLの直下にあり、ページは毎回PHPとDBを叩いて生成され、攻撃者にとっては「やりがいのある」構成だ。セキュリティパッチの更新も頻繁で、更新のたびに表示が崩れるリスクと戦うことになる。

しかも、サーバーは常時PHPとMySQLを動かし、静的ページすらも“動的に”生成される。この構造のまま「表示速度」「安定性」「セキュリティ」をすべて満たすのは、もはや不可能に近い。

なお、CMS構成のこうした構造的リスクについては、以下の別記事にて、設計レベルから詳しく解説している。「なぜ管理画面が公開URLにあるのか?」「リアルタイム生成は本当に必要なのか?」といった素朴な疑問から、理想的な分離構成まで踏み込んで考察している。

Markdown + SSG + CDNという現代的解

そこで注目されるのが、**SSG(Static Site Generator)**という選択肢だ。SSGはあらかじめ記事をHTMLとして生成し、CDNで配信する。PHPもMySQLも要らない。表示は爆速、攻撃対象はほぼゼロ、コストは無料同然。さらにMarkdownで記事を書くため、装飾ではなく中身に集中できる。Gitとの親和性も高く、生成AIによる支援(構成案→記事化→整形)との相性も抜群だ。

なお、MarkdownとSSGの組み合わせがもたらす執筆効率の高さについては、以下の別記事で詳しく紹介している。装飾に煩わされず、思考と構造に集中できる執筆体験を、ぜひ知ってほしい。

「思考の邪魔」をしない執筆体験

WordPressのGUI操作は、Markdownに慣れた者にとっては“地獄”に近い。太字にするだけでもボタンをクリックし、装飾の見た目がテーマ依存で変わってしまう。構造化されていない文書は、生成AIによる解析にも向かない。コンテンツの中身ではなく、見た目に気を取られた時点で、知的生産としては遠回りなのだ。

一方、Markdownは構造が明快で再利用しやすく、AIにも優しい。文章の意味と構造が分離されているため、自動処理・変換・連携もやりやすい。まさに「考えることに集中できる」執筆環境であり、今後の情報発信の主軸となるにふさわしい。

SSGを使うという“設計思想”

SSGは単なるツールではなく、「セキュリティ設計」「コスト設計」「執筆思想」すべてに関わる選択である。構造的に堅牢で、表示高速、拡張も容易。そして何より「攻撃されにくい」という安心感がある。WordPressのように「防衛し続ける構成」ではなく、そもそも「狙われない構成」を作るべき時代になった。

CMSに疲れたすべての人にこそ、SSGという選択肢を知ってほしい。いま、Web発信の構造は、大きく変わろうとしている。