「環境のために、プラスチックストローから紙ストローへ」

ファストフード店やカフェで、紙ストローが出てくることは今や珍しくない。見た目には環境に配慮した行動に見えるが、本当に科学的・環境的に正しい選択なのだろうか?

この記事では、紙ストロー導入の背景と現実、その環境負荷と実効性、そして「善意のエコ」が生み出す“合理的に不合理”な状況を検証する。


なぜ紙ストローが広まったのか?

紙ストローが注目された大きなきっかけは、**2015年にSNSで拡散された「ウミガメの鼻にストローが刺さった動画」**である。

この動画は世界的な反響を呼び、プラスチックごみによる海洋汚染への関心が一気に高まった。これを受けて、企業や自治体は**「脱プラスチック」運動の象徴的手段**として、紙ストローへの切り替えを進めた。


実はストローは海洋ごみ全体のごく一部

ところが、環境保護団体や研究者の調査によれば、ストローが海洋プラスチックごみに占める割合は0.03%以下とされている。

つまり、ストローを紙に変えたところで、根本的な問題解決にはあまりつながらないのが実情である。


紙ストローにも環境負荷はある

紙ストローは分解しやすいが、

  • 製造時に水やエネルギーを多く消費する
  • 耐久性を確保するために**防水加工(ラミネート)**が施されており、完全な自然分解は困難な場合も
  • 使用感が悪く、途中でふやけて使えなくなるという不満も多い

という課題がある。

結果的に、使用途中で捨てられたり、2本目が必要になったりすれば、リソース効率はむしろ悪化する可能性がある。


感情的マナーと科学的合理性のズレ

紙ストロー導入は、「ウミガメを守ろう」「海を守ろう」という感情的なモチベーションに基づいて広がった。

しかし、科学的・統計的に見ると、

  • 本当に対処すべきは漁網や洗剤ボトルなどの大型プラスチック
  • 廃棄インフラや回収率の改善のほうが、影響が大きい

といった指摘がされている。

このように、目に見える変化や“やってる感”のある施策が、本質的課題から注意をそらしてしまうリスクもあるのだ。


結論:「行動の意図」と「効果」を分けて考える

紙ストローの導入は、「何かしなければ」という誠意や善意から始まった社会的アクションである。

だが、私たちは「行動したかどうか」だけでなく、

  • その行動が本当に目的に適っているのか?
  • 他にもっと効果的な手段はないのか?

という視点を忘れてはならない。

科学的・環境的合理性に基づいた対策を行うには、感情的モチベーションと冷静なデータの両立が必要である。

紙ストローは、合理的に不合理な社会の構造を象徴する好例のひとつにすぎない。

こうしたマナーと科学のすれ違いは他にも存在する。関心のある方は以下のまとめ記事を参照して欲しい。