シックスシグマとDMAICの関連性 - シックスシグマという言葉は一旦忘れろ
DMAICとは、Define(定義)、Measure(測定)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)の5段階で構成される、問題解決のためのフレームワークである。
もともとシックスシグマの中で生まれた手法だが、現在では品質管理だけにとどまらず、幅広い業務改善に応用可能な“思考の枠組み”として注目されている。
本記事の対象読者は、以下のような方々だ:
- PDCAに限界を感じているが、次に学ぶべきフレームワークが分からない方
- DMAICに関心はあるが、「シックスシグマ=DMAIC」という説明に違和感を持っている技術者
- 統計学に苦手意識があり、DMAICの導入をためらっている現場リーダーや改善担当者
本記事では、DMAICが本来持っている“汎用的な問題解決力”に光を当て、「シックスシグマという言葉は忘れろ」という視点から、その独立した価値を見つめ直す。
DMAICは、シックスシグマを達成するためのフレームワークである。――この説明を聞いて、「じゃあDMAICって、統計の知識が必須なの?」「シックスシグマをやる気がないなら関係ないのか」と感じた人はいないだろうか?
実はこの“セット販売”のような説明こそ、DMAICという強力な手法の普及を妨げている。
※PDCAの限界については、以下記事を参照のこと。
DMAICとの出会い、そして違和感
筆者自身、PDCAの限界を感じていた。現場で改善活動を行う中で、PDCAでは根本的な原因を見誤ったり、改善が一過性で終わってしまったりする場面に多く出くわしてきた。そんなとき、「DMAIC」という新しい改善フレームワークの存在を知った。
しかし、そこに立ちはだかったのが“シックスシグマ”という言葉だった。
DMAICを調べれば調べるほど、どの解説も「シックスシグマの一部」として紹介してくる。まるで、「シックスシグマを理解しないとDMAICは使えない」とでも言わんばかりだった。さらに、「DMAICは統計的手法を活用し、工程能力を改善するものである」といった説明が重ねられると、こう思ってしまう。
「それなら、データが豊富な工程じゃないと使えないのか?」
「そもそも工程能力なんて、何十年も前からやってるし、今さら“6σ”なんて騒ぐ話か?」
こうして、「DMAICって結局シックスシグマの道具でしょ?」という誤解が生まれ、学習や導入を断念してしまう人も多い。
DMAICの本質は“問題解決のフレームワーク”
だが、これは大きな誤解だ。
DMAICは、確かにシックスシグマと共に広まったが、その構造自体は非常に汎用的で、どんな業種・現場にも応用できる。筆者はこう考えている:
「DMAICは、単なる品質管理手法ではなく、“問題解決の思考手順”である」
その構成を見てみよう。
- D(Define):問題を定義する
- M(Measure):現状を測定する
- A(Analyze):原因を分析する
- I(Improve):改善策を立てて実行する
- C(Control):改善を維持・管理する
これは、データが豊富にある製造現場でなくても使える。たとえ数値データが少なくても、観察記録や現場ヒアリング、タイムスタディなどをMeasureとAnalyzeに置き換えることで、DMAICの筋道は保てるのだ。
なぜ「シックスシグマという言葉は一旦忘れろ」と言いたいのか
筆者は、DMAICの価値を「シックスシグマ文脈の中だけで語るな」と言いたいのではない。むしろ逆で、「シックスシグマという名前がDMAICの導入を妨げている」という構造的な問題を指摘している。
DMAICは、シックスシグマの文脈でも使えるし、使うべきだ。ただし、それだけではない。
DMAICは独立した問題解決のフレームワークとして、PDCAに代わる新しい改善活動の礎になり得る。にもかかわらず、「シックスシグマ=DMAIC」という硬直的な教え方をしてしまうと、
- 統計知識にアレルギーを持つ人は距離を置いてしまい、
- 統計に慣れた技術者は「こんなの昔からやってる」と軽視し、
どちらの層にも受け入れられない、という逆効果が生まれる。
おわりに:PDCAの“先”を見たい人へ
もしあなたが、
- 「PDCAはやっているつもりなのに現場が良くならない」
- 「もっと構造的に改善を進めたい」
- 「再発しない改善を目指したい」
と感じているなら、DMAICは一度きちんと学んでみる価値がある。
そしてその際は、どうか「シックスシグマという言葉」は一度脇に置いてほしい。DMAICはそれ単体で、極めて強力な思考のフレームワークなのだから。