日本機械学会の機械工学事典と「PHPの残念さ」について

日本機械学会の機械工学事典と「PHPの残念さ」について 日本機械学会が提供している「機械工学事典」という立派なコンテンツがある。専門家が執筆した質の高い記事が並び、情報資産としては極めて価値が高いはず……なのだが、いざアクセスしてみると、ほぼ確実に「Too Many Requests」エラーに遭遇する。 「えっ、そんなにアクセス集中してるの?」「今どきバズってるの?」「受験生が殺到してる?」──と思ったが、どう考えてもそんなことはなさそうだ。 ふとURLを確認してみると、拡張子が「.php」。なるほど、もしかしてこれ、各ページ(あるいは各用語)の内容をデータベースに登録しておいて、アクセスのたびにPHPが動的にページを生成してるのではないか?と気づいた。 ……アホか。 動的生成に潜む“無駄” Web制作にそこまで詳しいわけではないが、自分でブログを立ち上げるにあたり、いろいろな方式を調べた結果、現在はSSG(Static Site Generation)というスタイルに辿り着いている。 SSGにした理由は明確だ: Markdown形式で手元にコンテンツを保管できる CMSのように中身を他人に“握られない” ソフトウェアやサービス終了のリスクに備えられる SSG + CDNで爆速表示・低コスト・高セキュリティ 昨今、livedoor BlogやYahoo!ジオシティーズなどが次々とサービス終了し、貴重な情報資産がインターネットから消えていく現実を目の当たりにしてきた。動的生成・CMS依存の限界を肌で感じた結果、静的コンテンツの価値に気づいたのだ。 なぜ専門学会の事典が“動的”なのか 日本機械学会のような権威ある機関が、なぜいまだに動的生成を選んでいるのか? もちろん内部事情はわからない。しかし、もし仮に「用語と内容をDBに登録→PHPで動的生成」という構成になっているのだとすれば、それはあまりにも“非効率”だ。 アクセスのたびに処理が走る 不必要にDBに負荷がかかる CDNキャッシュも効きにくい 障害時の復旧性も悪い 仮に用語や定義の更新がごくまれであるなら、最初から静的HTMLで出しておけばいいのでは? 学術コンテンツこそ、静的に保守して長期保存すべきだと思う。 静的運営は“環境にもやさしい” 最近では、Webサイトの処理負荷やエネルギー消費もSDGs文脈で語られ始めている。PHPで毎回生成するよりも、静的にビルドしてCDNで配信するほうが、サーバ負荷も電力消費も少ない。素人なりに思うのは、「企業サイトの大半や、更新頻度の低いコンテンツは、SSGで十分なのでは?」ということだ。 なお、静的サイト運用が環境負荷の低減やSDGsへの貢献にもつながるという観点については、以下の記事でより詳しく掘り下げている: 静的サイトはSDGsに貢献する|環境と知識と技術の三方良し まとめ 日本機械学会の機械工学事典は、内容は素晴らしいのに、技術的な実装で“損をしている”ように見える。Too Many Requestsに出会った瞬間、「これは情報資産として致命的だ」と思ってしまった。PHPが悪いという話ではなく、「コンテンツの性質に合わない技術選定」が問題なのだ。 せっかくの知識資産。静的に、軽やかに、未来へ受け渡してほしいと、強く願う。 URL構造の貧弱さが知識の流通を妨げる さらに深刻なのは、この構成では「知識のリンク性」が極端に悪くなる点だ。doku.php?id=c03 のようなURLでは、内容が一切わからず、リンクとしても非常に不親切だ。 事典コンテンツは、他の学術文献や教材、解説ブログなどから引用・参照されて初めて“生きた知識”になる。しかしこの構成では: 共有されにくい 意味が伝わらない 検索エンジンに評価されない つまり、知識を展開するための基盤として、根本的に不適切なのだ。 学会として「公開する」ことは重要だが、それ以上に、「共有・展開される」ための設計が不可欠である。

2025年5月16日

静的サイトはSDGsに貢献する|環境と知識と技術の三方良し

はじめに:Web技術と持続可能性の交差点 近年、Webサイトの構築方法として「静的サイト生成(SSG)」が注目を集めている。これは、ページを事前に生成し、サーバーへの負荷を軽減する手法だ。一方で、持続可能な開発目標(SDGs)への関心も高まっており、環境への配慮が求められている。本記事では、静的サイトがどのようにSDGsに貢献し、環境、知識、技術の三方良しを実現するかを探る。 静的サイトの環境への利点 サーバー負荷の軽減 静的サイトは、ページをビルド済みで配信するため、アクセスのたびに処理を走らせる必要がない。これは、動的生成型のPHPサイトなどと対照的であり、サーバーの消費電力や負荷を大幅に軽減できる。サーバー台数の削減にもつながるため、結果的にCO₂排出の削減に貢献する。 CDNとの相性の良さ SSGはCDNとの親和性が高く、ユーザーの地理的位置に応じた効率的な配信が可能になる。データ転送の効率化により、ネットワーク全体の負荷とエネルギー消費を抑えられる。 知識の持続可能な共有 長期的なアクセス性の確保 動的CMSやデータベースベースのWikiは、サービス終了やデータベース障害に弱い。一方、静的サイトはMarkdownなどのプレーンファイルとして手元に保管でき、WebページもHTMLとしてそのまま保管できる。これにより、知識資産の長期保存が可能となる。 検索性とリンク性の向上 静的サイトでは、意味のあるURL(例:/dictionary/torque)を付けることができ、検索エンジンや人間にとっても扱いやすい。これは知識を引用・展開するうえで非常に重要であり、学術・教育サイトにとっては死活問題である。 技術的な利点と持続可能性 セキュリティの向上 動的サイトはサーバーサイドで処理が発生するため、XSSやSQLインジェクションなどの攻撃リスクがある。SSGは基本的にHTML配信のみなので、攻撃面が極端に少ない。これは保守性にも直結する。 メンテナンスと運用コスト 構成がシンプルなため、開発者・編集者にとっても扱いやすい。更新もローカルで行い、Gitで管理するようにすれば、チームでの共同編集も安全かつ再現性の高いものになる。 世の中的な動きとエビデンス Google:Core Web Vitalsの導入 Googleは検索ランキングにおいて「Core Web Vitals(LCP, FID, CLS)」といったWeb表示性能指標を導入しており、軽量かつ高速なサイトは明確に優遇されている。 参考:Google Search Central Blog – Core Web Vitals 将来への展望:Webサービスとエネルギー効率の評価へ 現時点では、Webサイトのエネルギー効率やCO₂排出量を評価する制度が浸透していないように思える。しかし、現在の社会ではすでに、サプライチェーン全体でのCO₂排出量算出や削減の取り組みが物質分野・エネルギー分野で加速している。 その中で、Webサービスにおける無駄なサーバー稼働による電力消費が評価の対象外であることは、いずれ問題視されるだろう。静的サイトへの移行は、この点でも社会的に評価される流れが生まれる可能性がある。 いまはまだ広く認知されていないが、将来的には「エネルギー効率の良いWeb設計」が、調達基準や社会的評価の対象になるかもしれない。 静的サイト運用の必要性を、実際の公共系サイトの構成から問題提起した例として、以下の記事も参照してほしい。というか、この記事のアイディアは、以下記事を書いている際に思い付くに至った。 日本機械学会の機械工学事典と「PHPの残念さ」について 結論:静的にしていくことは“正しさ”である 静的サイトは、単に「高速で安全」なだけでなく、環境負荷を減らし、知識の流通と保存を支える技術である。将来的に社会がこの方向に進まざるを得ないのは、「大衆が馬鹿じゃなければ」必然の流れだ。 技術者として、情報発信者として、静的にすることは正義である。

2025年5月16日

4年間、我が家のEcho Dotは何を聞いていたのか?|スマート家電とプライバシーを改めて考える

4年間、我が家のEcho Dotは何を聞いていたのか?|スマート家電とプライバシーを改めて考える 筆者がEcho Dotを初めて購入したのは2021年3月。当時は半信半疑で「音声で電気をつけるより、スイッチの方が早いやん」と思っていた。 だが、布団から出ずに照明を消せる快適さに感動し、ニュースや音楽の再生、タイマーの設定と、スマートスピーカーは日常にすっかり溶け込んでいった。 あれから4年。スマートスピーカーは家庭内で当たり前の存在になったが、それに伴って「この家電は、私たちの何を聞き取っているのか?」という不安もまた、かすかに増してきた気がする。 2025年春、Amazonの新機能「Alexa+」が話題になった。ユーザーの音声を保存・分析して学習に活用するというその仕様に、筆者は一抹の懸念を覚えた。 Amazon Echo『Alexa』の利用は安全? スマートスピーカーの利用リスクとは この記事では、4年使って見えてきた“スマート家電とプライバシーの距離感”を、最新の法制度や業界動向と照らしながら整理してみたい。 Alexaが聞いている?スマート家電とプライバシーの法的リスク スマートスピーカーをはじめとするスマート家電が一般家庭に広く普及し、「話しかけるだけで家電が反応する」生活が当たり前になりつつある。筆者もAmazon Echoやスマート照明、スマートプラグなどを日常的に使用しており、その利便性は疑いようがない。特に就寝時に布団から一歩も動かず照明を操作できる点などは、かつて考えられなかった快適さだ。 しかし2025年現在、スマート家電が「どこまで私生活を覗いているか」について、改めて法的視点から問い直す必要がある。 最新のニュースが投げかける疑問 2025年4月、Amazonの新機能「Alexa+」が話題になった。生成AIによる対話性を高めた同機能では、ユーザーの音声データがクラウド上に保存され、AIの学習に利用されることが判明。ユーザーの声、内容、タイミングが、より詳細に記録されるという。 実は過去にも、Amazonが子供の音声データを削除後も保持していた件で米連邦取引委員会から罰金を受けた事件がある。さらに、従業員が音声録音を無断で聴取していたとの報道もあった。筆者としても、常時マイクがオンになっていることに対して、「技術開発に使うのか?」「個人を特定できるのか?」といった疑問を抱く瞬間はある。 こうした事例は、スマート家電が単なる「便利なツール」ではなく、「常に情報を集める装置」であることを再認識させる。 業界ガイドラインという動き 実際、日本国内でも2023年に業界団体がスマート家電に関するプライバシー保護のガイドラインを策定している。以下記事参照。 IoT家電で生活スタイルが丸裸に? 業界団体がプライバシー保護ガイドラインを策定 ガイドラインでは、以下のような原則が定められている: 利用者への分かりやすい情報提供(どの情報を収集するか) 収集データの目的外利用の禁止 ユーザーによるデータ削除・確認の権利 第三者提供を行う場合の明示的同意 これらは、欧州のGDPR(一般データ保護規則)を参考にした構成になっており、日本の個人情報保護法と実務上の隙間を埋める役割を担っている。 スマート家電と個人情報保護法の接点 では、日本の個人情報保護法では「スマートスピーカーが収集する音声」はどう扱われるのか? 法的には、音声データそのものは「個人識別符号」や「個人情報」に該当する可能性がある。たとえば、音声の中に氏名・住所・生活習慣が含まれていれば、明確に保護対象となる。また、声紋などの特徴を機械的に分析することで個人を特定できる場合、それも個人情報にあたる。 一方、個人情報保護法には「家庭内利用の例外」という規定がある。つまり、ユーザー個人が趣味や生活の一環としてスマートスピーカーを使う分には法規制の対象外となる。しかし、メーカー側が情報を収集・保存・解析する場合は、当然ながら法律の適用を受ける。 筆者の立場として 筆者としては、スマートスピーカーの便利さを享受しながらも、その裏で何が保存され、どう使われるかが「ブラックボックス」になっている現状には懸念がある。 スマート家電は今後さらに高機能化し、音声、画像、行動履歴といった情報を総合的に扱う時代が来るだろう。その時、私たちは「設定」や「利用規約」で守られるのではなく、もっと根本的に“家庭の中の情報”の扱われ方を問い直す必要がある。 おわりに 本記事では、2025年に注目されたAlexaの音声データ収集をきっかけに、スマート家電のプライバシーと法的なリスクについて考察した。 今後、ユーザーが「便利さ」の裏側を意識しながらテクノロジーと付き合うためには、法律の整備と同時に、透明性ある企業姿勢、そして消費者の情報リテラシーが求められる。

2025年5月15日

Markdownで図を綺麗に書く方法|Mermaid記法の紹介

Markdownで図表を綺麗に書く方法 対象読者と実行環境 対象読者:Markdown初級〜中級者、図表(特にフローチャートや関係図)を綺麗に描きたい人 想定環境: Markdown対応エディタ(Typora、Visual Studio Code + Mermaid Preview 拡張など) GitHubやObsidian、DocsifyなどのMermaid対応ビューア 1. Mermaidとは何か? Mermaidは、Markdown内でフローチャート、シーケンス図、ガントチャート、クラス図などを簡潔な記法で描画できるツールだ。 ```mermaid flowchart TD A[開始] --> B{条件分岐} B -- はい --> C[処理1] B -- いいえ --> D[処理2] C --> E[終了] D --> E ``` flowchart TD A[開始] --> B{条件分岐} B -- はい --> C[処理1] B -- いいえ --> D[処理2] C --> E[終了] D --> E 対応ビューアでは自動で図が生成される。 2. Mermaidの基本構文 2.1 フローチャート ```mermaid flowchart LR A[入力] --> B[処理] --> C[出力] ``` flowchart LR A[入力] --> B[処理] --> C[出力] 2.2 シーケンス図 ```mermaid sequenceDiagram participant ユーザー participant サーバー ユーザー->>サーバー: リクエスト サーバー-->>ユーザー: レスポンス ``` sequenceDiagram participant ユーザー participant サーバー ユーザー->>サーバー: リクエスト サーバー-->>ユーザー: レスポンス 2.3 ガントチャート ```mermaid gantt dateFormat YYYY-MM-DD title プロジェクトスケジュール section 開発 設計 :a1, 2024-05-01, 2d 実装 :after a1, 3d テスト :2024-05-07, 2d ``` gantt dateFormat YYYY-MM-DD title プロジェクトスケジュール section 開発 設計 :a1, 2024-05-01, 2d 実装 :after a1, 3d テスト :2024-05-07, 2d 3. Mermaid記法を綺麗に整えるコツ 3.1 ノードのラベルを簡潔にする 長すぎると読みにくくなる 3.2 ノード配置を意識する flowchart TD(縦)、LR(横)などレイアウト方向を選ぶことで見やすくなる 3.3 必要ならサブグラフで整理 ```mermaid flowchart TD subgraph フローA A1 --> A2 end subgraph フローB B1 --> B2 end A2 --> B1 ``` flowchart TD subgraph フローA A1 --> A2 end subgraph フローB B1 --> B2 end A2 --> B1 4. Mermaidに対応したエディタとツール ツール/エディタ Mermaid対応 備考 VSCode + Mermaid拡張 ○ リアルタイムプレビュー可能 Obsidian ○ 標準でMermaid対応 Docsify + plugin ○ Webサイトでも描画可能 Typora △(一部) バージョンや設定により異なる GitHub ○ Mermaid記法の直接埋め込みに対応 5. Mermaidの制限と注意点 大規模な図は視認性が下がるため分割推奨 Markdownビューアごとに描画の差異がある 古いビューアはMermaid未対応のこともある まとめ Mermaidを使えば、Markdownでも綺麗な図表が書ける フローチャート、シーケンス図、ガントチャートなどが簡単に描ける VSCodeやObsidianなどの環境で効率よく可視化 Markdownでの文書管理に図解を加えると、情報の伝達力が大きく向上する。Mermaidを活用して、読みやすく美しい技術資料を書こう。 ...

2025年5月15日

本当のDXの前にやるべきこと

本当のDXの前にやるべきこと 最近「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」が各所で叫ばれている。しかし現場にいると、こう思うことがある。 「そもそも既存の仕事環境・やり方に、改善の余地が山ほどあるのでは?」 なぜそれを誰も手を付けないまま、DX化すればすべてうまくいくような幻想を持ってしまうのか。今回はその疑問を軸に、「本当のDXの前にやるべきこと」について考える。 1. DX以前の問題が山積している たとえば、現場には以下のような問題が未だに存在している: ファイル名の付け方がバラバラ:検索も連携もできず、属人化。 資料の保管場所がバラバラ:似た資料が3つの部署に散在。 紙文化からの脱却ができていない:回覧・押印が前提の仕事設計。 はんこ中心主義:電子承認と対立。 意思決定プロセスが硬直化:どうでもいい書類でも部長決裁・複数部署合議。 こうした状況下で「システムを入れればなんとかなる」という発想は、土台がぐらついたままビルを建てようとするようなものだ。 2. DX化に失敗する典型パターン ありがちな失敗例として、「うちのやり方にシステムを合わせろ」症候群がある。 「うちの部署のやり方は昔からこうだ。このフローをそのまま電子化しろ」 こう言われると、まともなシステム会社ほど逃げ出す。結果、残った会社がオンプレミスの独自システムを必死に作る羽目になり、保守コスト・拡張性ともに地獄を見ることになる。 3. 紙のシステムには、実は完成度があった 皮肉なことに、紙文化全盛時代の運用は、ある意味よく考えられていた。 回覧順、原紙の保管ルール 個人情報の管理(ラベルで識別、鍵付き書棚) ファイルの物理的整列(背表紙にテープを貼り、ファイルの並び順を維持) 実際、上記のような背表紙のテープ整理も、きちんと設計されたアナログUXと言える。 ではなぜ、これが電子化に失敗したのか。 それは「電子ファイルの正式文書化」に対する認識が欠けていたからだ。 電子ファイルは「ワープロ出力の下書き」程度にしか扱われず、共有フォルダも「作業途中の一時置き場」という感覚から抜け出せなかった。 4. ワープロ文化の呪縛 実は多くの混乱は、「PCによる文書作成」がワープロの延長線上で捉えられていたことに由来する。 ファイル名なんてどうでもいい: ワープロ時代の名残で、紙が正式文書。だから、中間生成物のファイル名なんてどうでもいい。 保存場所もどうでもいい: ワープロ時代の名残で、紙が正式文書。だから、中間生成物の保存場所なんてどうでもいい。 更新履歴も残さない: ワープロ時代の(略)。 このように、電子ファイルは**正式な業務ドキュメントではなく、「紙を出すための中間生成物」**という認識で扱われてきた。その結果、文書管理番号のような厳密なルールが紙の時代には存在したのに、電子ファイルには導入されず、混乱が生まれた。 5. 本当のDXに必要な土台とは うまくいっているDXとは、「システムを入れたこと」ではなく、「情報管理・意思決定・責任分担の仕組みが整っていること」である。 紙時代にあった「文書管理番号」「管理表」「保管責任」などを、電子化後もきちんと継承し直すことが必要だ。 つまり: ファイル名の命名規則を決める フォルダ構成を組織で共通化する 電子文書の責任者と保存年限を定める このような地味な「整理整頓」こそが、本当のDXの前にやるべきことだ。 6. まとめ 「DX」の前には、「正しい文書管理」「適切な権限設計」「情報の流通設計」がある。ITツールは、それを支える道具でしかない。道具の前に、まず土台を整えよう。 DXで未来を変えるには、まずは目の前のファイル名から変えていくしかない。

2025年5月15日

2025年電気系資格カレンダー

2025年電気系資格カレンダー 2025年に実施される/された、主要な電気系資格試験(電験三種・電気工事士など)のスケジュールをまとめた。2025年の受験計画を立てるにあたり、参考にして欲しい。なお、機械系資格カレンダーについても以下に記載してある。 2025年機械系資格カレンダー 資格別スケジュール詳細 電気工事士一種(上期) 【実施日】学科(CBT):4月1日~5月8日、技能:7月5日 【申込期間】2月14日~3月3日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電気工事士一種(下期) 【実施日】学科(CBT):9月1日~9月18日 or 学科(筆記):10月5日、技能:11月22日 【申込期間】7月28日~8月14日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電気工事士二種(上期) 【実施日】学科(CBT):4月21日~5月8日 or 学科(筆記):5月25日、技能:7月19日 or 20日 【申込期間】3月17日~4月7日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電気工事士二種(下期) 【実施日】学科(CBT):9月19日~10月6日 or 学科(筆記):10月26日、技能:12月13日 or 14日 【申込期間】8月18日~9月4日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電験三種(上期) 【実施日】学科(CBT):7月17日~8月10日 or 学科(筆記):8月31日 【申込期間】5月19日~6月5日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電験三種(下期) 【実施日】学科(CBT):2026年2月5日~3月1日 or 学科(筆記):3月22日 【申込期間】11月10日~11月27日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能

2025年5月14日

IBT試験の拡がりと課題|自宅受験の可能性と現実

はじめに|試験はどこまで“自由”になれるか かつては、試験とは「年に一度、遠くの試験会場まで行って、紙とペンで受けるもの」だった。しかし、CBT(Computer Based Testing)の導入により、私たちはようやく「時間と場所の制約」から解き放たれつつある。なお、CBT試験の増加による利点については、以下記事に記してある。 CBT試験の増加希望|受験機会の拡大と技術者不足対策としての意義 そして今、さらに自由度を高める新たな形態――**IBT(Internet Based Testing)**が注目されている。自宅や職場で受験ができるIBT方式は、果たして“試験の未来”となり得るのだろうか? IBTとCBTの違い 観点 CBT IBT 会場 テストセンター 自宅や職場など 機材 会場設置のPC 自分のPC 監督 現地監督者あり オンライン監督(AI+人) 例 ITパスポート、電験三種など ビジネス実務法務検定など 日本におけるIBT方式導入の現状 ビジネス実務法務検定2級・3級:CBT方式の他に、IBT方式の提供有り。 順次追加中 IBT方式のメリットと可能性 完全に自由な時間・場所での受験が可能。 地方・海外在住者でも公平な試験機会。 試験会場の混雑や交通トラブルを回避。 障害者や育児中の人など、多様なライフスタイルに対応可能。 IBT導入の課題と制約 本人確認の厳格化が必要(顔認証、身分証提示、AI監視など)。 不正行為(カンニング)対策の技術的困難。 通信環境やPC機材の整備格差が障壁となる。 手書き問題・実技試験との相性に課題。 自宅受験の意外なハードル:部屋が“見られる”というプレッシャー IBT試験では、自宅のPCとWebカメラを使って試験を受けることになるが、これが意外にも心理的ハードルになることがある。「部屋が汚いから受けられない」「背景に生活感が出すぎるのが恥ずかしい」といった声は、SNSや検索ワードにも頻出する。 とくに日本では「部屋=プライベート空間」であり、それを試験監督やAIプロクターに見せること自体に抵抗を感じる人が多い。また、部屋の壁にポスターや本棚がある場合、「不正を疑われないか」と不安になるケースもある。 対策例: 簡易的な背景スクリーン(折りたたみ式)を使う Web会議用の背景ぼかし機能を併用(許可されている場合) 清潔感のある一角だけを整理し、カメラを固定 コワーキングスペースやテレワークブースの活用 このように「部屋が汚いからIBTを諦める」必要はない。実際には、受験環境に必要なのは“清潔さ”よりも“映像と音声の明瞭さ”と“誠実な態度”である。 また、根本的な部屋の整理については、製造業で使われる5S(「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」)の考え方が役に立つ。5Sについては、以下記事を参照されたし。 5Sのすすめ 〜片付けに理論があるという話〜 → 5Sとは何か? その理論的な意義や構造を解説する入門編。 今後の展望|IBTは“当たり前”になるか Webカメラ監視やAIプロクターの技術向上により普及が加速する可能性。 CBTとIBTのハイブリッド運用(例:選択可能)が現実的な移行モデル。 「いつでも・どこでも受けられる試験」が当たり前になる社会へ。 筆者の視点|IBT試験をいつ受けられる? 筆者自身は、CBT試験は複数回経験しているが、IBT試験はまだ未経験である。今後、IBTによる自宅受験がより整備されてくれば、ぜひ試してみたいと考えている。 CBTの次のステップとして、IBTがどこまで進化するのか。今後の動向に注目しつつ、自らの受験体験も引き続き記録・発信していきたい。 メモ(メリット・デメリット) 心理的抵抗:検索するとネガティブワードがサジェストされる(部屋が汚い、カンニング等) 世代間により抵抗があるかも:30代以上のネット世代は、ネット経由で顔を出すなど、個人情報の提供に極度のおそれ(動画配信世代ではないため) 端末性能の違い:カメラ等同時稼働により、性能が低い端末での受験保証をどうするか 活用及び提携:コロナ禍で流行った、駅前のテレワークブース等を利用 カンニング等の問題が多くなれば、今後、IBT試験で取得した資格そのものも信頼を失う恐れ

2025年5月14日 · (updated 2025年6月11日)

なぜ今、ブログにサイドバーが消えつつあるのか|小説消費との意外な共通点

なぜ今、ブログにサイドバーが消えつつあるのか|小説消費との意外な共通点 かつて、ブログといえばサイドバーが定番だった。カテゴリ、人気記事、タグクラウド、月別アーカイブ……読み手は気になったブログを見つけたら、作者の他の記事を「読み漁る」文化があった。小説の世界でも同様で、気に入った作家を見つけたら、その人の他の作品も読んでみようと思うのが普通だった。 だが、今は違う。ふと気がついた。静的サイトジェネレーター(SSG)で人気のテーマをいくつか見ていたところ、どれもサイドバーがない、もしくは最小限しかない。おや?と思った。 その直後、10年ほど前に小説家が語っていた話を思い出した。「昔は作家買いをしてくれる読者が多かったのに、今は“バズった1作品だけ読まれて、他のシリーズには手が伸びない”。」 この2つは、別の現象ではない。読者行動が“全体を見る”から“単体消費”に変わったのだ。 読者は「読み漁り」から「単体消費」へ 昔(〜2010年代前半) 好きになったブログや作家の他の作品も読む サイトを「回遊」して楽しむ サイドバーはそのための道標だった 今(2020年代) SNSや検索でたまたま見つけた“1記事だけ”を消費 他の記事や作品を追いかけない サイドバーが減ったのは、それがあまり使われなくなったからだ Webと小説の共通点:バズった1本主義 この傾向はブログに限らない。Web小説、ラノベ、Z世代の情報消費すべてに共通している。 SNSで話題になった「1冊だけ」が読まれる 作家名は覚えられない。シリーズものは続かない 読者は“その瞬間の満足”だけを求めている 北海道大学の「ゼロ年代の情報行動の変容」や、沖縄国際大学の学報『羅針盤』でも、こうした読者行動の変化は観察されている。今の消費行動は「広く・浅く・瞬間的」であり、過去のように「作者を追いかける」スタイルは主流ではなくなっている。 では、設計はどう変えるべきか? サイドバーはあえて最小限にする 目次(TOC)だけで十分。記事に集中してもらう 回遊してほしいなら、記事の文中や末尾に自然な導線を仕込む 読み漁り型の読者にも対応する 記事が増えたら、「リンク集」や「このブログの読み方」ページを用意 タグやカテゴリは読者よりも自分のための構造整理と割り切る 読者行動の変化を、設計にどう活かすか ネットを長く使ってきた人ほど、サイドバーがないと違和感を覚えるかもしれない。それでも、時代は変わり、読み方も変わった。 今の読者は、1記事を読んだらすぐ離れていく。でもその1記事の中で「次の導線」が自然にあれば、ふとクリックしてくれることもある。読者が変わったなら、こちらの設計も変えていくしかない。 かつての読み漁り文化を懐かしむ気持ちを持ちつつ、今の単体消費型の行動様式にどう向き合うか。この変化を受け入れた上で、どんな情報設計をすれば伝わるのか。それを考えること自体が、ネットの読み手・書き手にとって価値ある営みだと思う。 昔の「読み漁り」も、今の「単体消費」も、それぞれの時代に合った読み方。 重要なのは、それに気づき、記録し、活かすことだ。 設計は、観察と気づきから始まる。

2025年5月14日

日本における過去の奇妙な英語学習法

日本における過去の奇妙な英語学習法 近年、生成AIやEdTechの進展により、言語学習はより科学的かつ個別最適化された時代に突入している。しかし、振り返ってみると、日本にはかつて「英語は絶対勉強するな」や「聞き流すだけで話せる」といった、一見奇妙とも思える英語学習法が流行していた時代がある。本記事では、そうした過去の学習法を分析し、そこに潜む心理的要因と科学的欠陥を掘り下げ、現代に通ずる教訓を抽出してみたい。 1. 流行した"奇妙な"英語学習法とは 「英語は絶対勉強するな!」 文法や単語暗記を全否定し、英語は英語のまま理解すべきだという極端なメッセージは、2000年代にベストセラー化。だが、初学者が文法知識なしに英語を大量に浴びても、処理できず挫折しやすい。 「聞き流すだけ」 教材販売系で多かった「1日5分聞き流すだけで英語が話せる」系の宣伝。出力(話す・書く)を伴わない受け身学習では、言語運用能力は育ちにくい。 「英語耳」ブーム 発音やリスニングに特化した学習法は、音の認識力を高めるには一定の効果があるものの、語彙や文法の知識、発話力まではカバーできない。 その他 速読・速聴を重視する「超スピード英語学習」 一切日本語を使わない「日本語禁止メソッド」 2. なぜ人々は信じたのか? こうしたメソッドは一見“楽そう”で“革命的”に見える。特に、以下のような心理が作用していたと考えられる。 努力を避けたい心理:短時間・受け身で成果が出るというメッセージが魅力的に映る。 成功者バイアス:もともと英語力がある層の成功談が誤解を生む。 教育不信・焦燥感:学校英語への不満と、グローバル化への不安が“抜け道”を求めさせた。 これは、法制度への過剰な期待や盲信が特定の"魔法の制度改革"に飛びつかせる現象と似ており、科学的リテラシーの欠如が共通項として挙げられる。 3. 学習科学からの視点 学習科学の観点から見ると、過去の奇妙な学習法には共通して以下のような欠陥がある: テスト効果の欠如:思い出す訓練がない エラー駆動学習の不在:間違いを経ての学習ができない 出力訓練の軽視:話す・書く練習が不足 適切な負荷管理の欠如:難しすぎる教材が多用される 対して、現代の学習設計では「思い出し・出力・間隔反復・負荷調整」の4原則が重視されており、これらはAIによる自動出題・進捗管理とも親和性が高い。 4. 制度設計や教育法との関係 この問題は、単なる学習法の流行に留まらず、教育制度や認知バイアスの設計とも関係が深い。たとえば、行政が推奨する学習政策や、文科省のカリキュラム設計においても、「楽に成果を出す」「ICTで解決」というスローガンだけが独り歩きすれば、再び似た誤謬が起こる。 したがって、制度設計にも「努力の見える化」「出力訓練の必須化」「科学的根拠の明示」といった原則が必要であり、これは学習法に限らず、教育政策・組織研修・キャリア支援制度などにも波及する視点だ。 5. おわりに 過去の奇妙な英語学習法は、その非科学性だけでなく、社会的・制度的文脈の中で理解されるべき問題である。学習者個人のリテラシーと同様に、制度設計側のリテラシーも問われている。技術と法、個人と社会の両面から、この問題を再考することが求められている。

2025年5月14日

CBT試験の増加希望|受験機会の拡大と技術者不足対策としての意義

CBT試験の増加希望|受験機会の拡大と技術者不足対策としての意義 近年、さまざまな資格試験においてCBT(Computer Based Testing)方式が導入されるケースが増えている。従来の「年1回・特定日・限られた会場」での受験スタイルから脱却し、「いつでも・どこでも・何度でも」とまではいかなくとも、柔軟な受験機会が得られるCBT方式への移行は、受験者にとって非常に大きな変化である。 IPA試験の先進的なCBT導入 代表的な事例として、情報処理推進機構(IPA)によるCBT化の進展が挙げられる。2011年にITパスポート試験でCBT方式が導入された。さらに2023年からは、基本情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験でも通年CBT受験が可能となった。 これにより、受験者は特定の試験日に縛られることなく、自身のスケジュールに応じて受験計画を立てることができる。技術職に就く社会人にとって、繁忙期を避けたり、学習の進捗に応じて柔軟に受験時期を調整できる点は極めて有利である。 電験三種もついにCBT化 「紙の国家試験」の象徴とも言える**第三種電気主任技術者試験(電験三種)**も、2023年度からCBT方式を導入した。この変化は非常に画期的である。 まず、年1回だった試験が年2回に増加した。さらに、従来は1日で4科目(理論・電力・機械・法規)を連続して受験しなければならなかったが、各科目を別日に分けて受験可能となり、精神的・身体的負担が大幅に軽減された。試験会場も全国約200箇所に拡大され、地方在住者の移動負担も緩和されている。 CBT導入の背景には、少子化による技術者不足への対応という側面もあったと推測する。インフラを支える電気系技術者の需要は今後ますます高まるが、試験のハードルが高く、また、採点の労力も高いままでは人材確保は困難である。CBT化は、技術者の裾野を広げる施策としても重要な役割を果たしている。 知的財産管理技能検定も全国展開へ 注目すべきもう一つの例は、**知的財産管理技能検定(知財検定)**である。2024年7月の第48回試験より、2級および3級にCBT方式が導入された。これにより、全国のテストセンターで受験が可能となり、これまで都市部に偏っていた受験機会が全国に広がった。 知財検定は、企業の研究開発部門や法務部門で重視される資格でありながら、地方在住者にとっては受験の機会が限られていた。CBT化によって、地方企業の社員や学生にとってもアクセス可能な試験となった点は高く評価できる。 CBT化は単なるデジタル化ではない CBT方式の導入は、単なる「紙からパソコンへの移行」にとどまらない。それは受験制度全体の設計思想をアップデートする機会でもある。受験者の多様なライフスタイル、地理的条件、学習ペースに対応する柔軟な仕組みが求められる現代において、CBTは最適な試験形態であると言える。 今後さらに多くの試験でCBTが導入され、「思い立ったときに受けられる資格試験」が当たり前になる社会の実現を期待したい。 IBT方式への期待と筆者の今後 加えて、CBTと並んで注目されるのがIBT(Internet Based Testing)方式である。これは自宅などからインターネットを通じて受験できる方式であり、試験会場への移動さえ不要となる。本人確認やカンニング防止の仕組みが整えば、さらに幅広い資格に導入されていく可能性がある。 筆者自身は、CBT試験は複数回受験しているが、IBT試験はまだ未経験である。今後、IBTによる受験環境が整えば、さらなる受験のしやすさを体験したいと考えている。 ところで、色彩検定はいつになったらCBT化してくれるのか。マークシート方式というだけで、今や受験する気が失せるこの頃である。 なお、自宅での受験が可能となるIBT(Internet Based Testing)方式については、以下の記事で詳しく紹介している。CBTの次に来る試験の進化に関心がある方は、ぜひ併せて読んでほしい。 IBT試験の拡がりと課題|自宅受験の可能性と現実

2025年5月13日