🛠️工学×⚖️法学 Tecklaw Notes
筆者は機械系出身ながら、法律・電気・情報と、理と文をまたぐ知的旅を楽しんでいます。
技術と制度の接点、思索と実践の往復を通じて、知の地図を描いていきます。
2025年電気系資格カレンダー 2025年に実施される/された、主要な電気系資格試験(電験三種・電気工事士など)のスケジュールをまとめた。2025年の受験計画を立てるにあたり、参考にして欲しい。なお、機械系資格カレンダーについても以下に記載してある。 2025年機械系資格カレンダー 資格別スケジュール詳細 電気工事士一種(上期) 【実施日】学科(CBT):4月1日~5月8日、技能:7月5日 【申込期間】2月14日~3月3日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電気工事士一種(下期) 【実施日】学科(CBT):9月1日~9月18日 or 学科(筆記):10月5日、技能:11月22日 【申込期間】7月28日~8月14日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電気工事士二種(上期) 【実施日】学科(CBT):4月21日~5月8日 or 学科(筆記):5月25日、技能:7月19日 or 20日 【申込期間】3月17日~4月7日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電気工事士二種(下期) 【実施日】学科(CBT):9月19日~10月6日 or 学科(筆記):10月26日、技能:12月13日 or 14日 【申込期間】8月18日~9月4日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電験三種(上期) 【実施日】学科(CBT):7月17日~8月10日 or 学科(筆記):8月31日 【申込期間】5月19日~6月5日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能 電験三種(下期) 【実施日】学科(CBT):2026年2月5日~3月1日 or 学科(筆記):3月22日 【申込期間】11月10日~11月27日 【主催】電気技術者試験センター 【形式】CBT、筆記、技能
IBT試験の拡がりと課題|自宅受験の可能性と現実 はじめに|試験はどこまで“自由”になれるか かつては、試験とは「年に一度、遠くの試験会場まで行って、紙とペンで受けるもの」だった。しかし、CBT(Computer Based Testing)の導入により、私たちはようやく「時間と場所の制約」から解き放たれつつある。そして今、さらに自由度を高める新たな形態――**IBT(Internet Based Testing)**が注目されている。自宅や職場で受験ができるIBT方式は、果たして“試験の未来”となり得るのだろうか? IBTとCBTの違い 観点 CBT IBT 会場 テストセンター 自宅や職場など 機材 会場設置のPC 自分のPC 監督 現地監督者あり オンライン監督(AI+人) 例 ITパスポート、電験三種など ビジネス実務法務検定など 日本におけるIBT方式導入の現状 ビジネス実務法務検定2級・3級:CBT方式の他に、IBT方式の提供有り。 順次追加中 IBT方式のメリットと可能性 完全に自由な時間・場所での受験が可能。 地方・海外在住者でも公平な試験機会。 試験会場の混雑や交通トラブルを回避。 障害者や育児中の人など、多様なライフスタイルに対応可能。 IBT導入の課題と制約 本人確認の厳格化が必要(顔認証、身分証提示、AI監視など)。 不正行為(カンニング)対策の技術的困難。 通信環境やPC機材の整備格差が障壁となる。 手書き問題・実技試験との相性に課題。 今後の展望|IBTは“当たり前”になるか Webカメラ監視やAIプロクターの技術向上により普及が加速する可能性。 CBTとIBTのハイブリッド運用(例:選択可能)が現実的な移行モデル。 「いつでも・どこでも受けられる試験」が当たり前になる社会へ。 筆者の視点|IBT試験をいつ受けられる? 筆者自身は、CBT試験は複数回経験しているが、IBT試験はまだ未経験である。今後、IBTによる自宅受験がより整備されてくれば、ぜひ試してみたいと考えている。 CBTの次のステップとして、IBTがどこまで進化するのか。今後の動向に注目しつつ、自らの受験体験も引き続き記録・発信していきたい。 メモ(メリット・デメリット) 心理的抵抗:検索するとネガティブワードがサジェストされる(部屋が汚い、カンニング等) 世代間により抵抗があるかも:30代以上のネット世代は、ネット経由で顔を出すなど、個人情報の提供に極度のおそれ(動画配信世代ではないため) 端末性能の違い:カメラ等同時稼働により、性能が低い端末での受験保証をどうするか 活用及び提携:コロナ禍で流行った、駅前のテレワークブース等を利用 カンニング等の問題が多くなれば、今後、IBT試験で取得した資格そのものも信頼を失う恐れ
なぜ今、ブログにサイドバーが消えつつあるのか|小説消費との意外な共通点 かつて、ブログといえばサイドバーが定番だった。カテゴリ、人気記事、タグクラウド、月別アーカイブ……読み手は気になったブログを見つけたら、作者の他の記事を「読み漁る」文化があった。小説の世界でも同様で、気に入った作家を見つけたら、その人の他の作品も読んでみようと思うのが普通だった。 だが、今は違う。ふと気がついた。静的サイトジェネレーター(SSG)で人気のテーマをいくつか見ていたところ、どれもサイドバーがない、もしくは最小限しかない。おや?と思った。 その直後、10年ほど前に小説家が語っていた話を思い出した。「昔は作家買いをしてくれる読者が多かったのに、今は“バズった1作品だけ読まれて、他のシリーズには手が伸びない”。」 この2つは、別の現象ではない。読者行動が“全体を見る”から“単体消費”に変わったのだ。 読者は「読み漁り」から「単体消費」へ 昔(〜2010年代前半) 好きになったブログや作家の他の作品も読む サイトを「回遊」して楽しむ サイドバーはそのための道標だった 今(2020年代) SNSや検索でたまたま見つけた“1記事だけ”を消費 他の記事や作品を追いかけない サイドバーが減ったのは、それがあまり使われなくなったからだ Webと小説の共通点:バズった1本主義 この傾向はブログに限らない。Web小説、ラノベ、Z世代の情報消費すべてに共通している。 SNSで話題になった「1冊だけ」が読まれる 作家名は覚えられない。シリーズものは続かない 読者は“その瞬間の満足”だけを求めている 北海道大学の「ゼロ年代の情報行動の変容」や、沖縄国際大学の学報『羅針盤』でも、こうした読者行動の変化は観察されている。今の消費行動は「広く・浅く・瞬間的」であり、過去のように「作者を追いかける」スタイルは主流ではなくなっている。 では、設計はどう変えるべきか? サイドバーはあえて最小限にする 目次(TOC)だけで十分。記事に集中してもらう 回遊してほしいなら、記事の文中や末尾に自然な導線を仕込む 読み漁り型の読者にも対応する 記事が増えたら、「リンク集」や「このブログの読み方」ページを用意 タグやカテゴリは読者よりも自分のための構造整理と割り切る 読者行動の変化を、設計にどう活かすか ネットを長く使ってきた人ほど、サイドバーがないと違和感を覚えるかもしれない。それでも、時代は変わり、読み方も変わった。 今の読者は、1記事を読んだらすぐ離れていく。でもその1記事の中で「次の導線」が自然にあれば、ふとクリックしてくれることもある。読者が変わったなら、こちらの設計も変えていくしかない。 かつての読み漁り文化を懐かしむ気持ちを持ちつつ、今の単体消費型の行動様式にどう向き合うか。この変化を受け入れた上で、どんな情報設計をすれば伝わるのか。それを考えること自体が、ネットの読み手・書き手にとって価値ある営みだと思う。 昔の「読み漁り」も、今の「単体消費」も、それぞれの時代に合った読み方。 重要なのは、それに気づき、記録し、活かすことだ。 設計は、観察と気づきから始まる。
日本における過去の奇妙な英語学習法 近年、生成AIやEdTechの進展により、言語学習はより科学的かつ個別最適化された時代に突入している。しかし、振り返ってみると、日本にはかつて「英語は絶対勉強するな」や「聞き流すだけで話せる」といった、一見奇妙とも思える英語学習法が流行していた時代がある。本記事では、そうした過去の学習法を分析し、そこに潜む心理的要因と科学的欠陥を掘り下げ、現代に通ずる教訓を抽出してみたい。 1. 流行した"奇妙な"英語学習法とは 「英語は絶対勉強するな!」 文法や単語暗記を全否定し、英語は英語のまま理解すべきだという極端なメッセージは、2000年代にベストセラー化。だが、初学者が文法知識なしに英語を大量に浴びても、処理できず挫折しやすい。 「聞き流すだけ」 教材販売系で多かった「1日5分聞き流すだけで英語が話せる」系の宣伝。出力(話す・書く)を伴わない受け身学習では、言語運用能力は育ちにくい。 「英語耳」ブーム 発音やリスニングに特化した学習法は、音の認識力を高めるには一定の効果があるものの、語彙や文法の知識、発話力まではカバーできない。 その他 速読・速聴を重視する「超スピード英語学習」 一切日本語を使わない「日本語禁止メソッド」 2. なぜ人々は信じたのか? こうしたメソッドは一見“楽そう”で“革命的”に見える。特に、以下のような心理が作用していたと考えられる。 努力を避けたい心理:短時間・受け身で成果が出るというメッセージが魅力的に映る。 成功者バイアス:もともと英語力がある層の成功談が誤解を生む。 教育不信・焦燥感:学校英語への不満と、グローバル化への不安が“抜け道”を求めさせた。 これは、法制度への過剰な期待や盲信が特定の"魔法の制度改革"に飛びつかせる現象と似ており、科学的リテラシーの欠如が共通項として挙げられる。 3. 学習科学からの視点 学習科学の観点から見ると、過去の奇妙な学習法には共通して以下のような欠陥がある: テスト効果の欠如:思い出す訓練がない エラー駆動学習の不在:間違いを経ての学習ができない 出力訓練の軽視:話す・書く練習が不足 適切な負荷管理の欠如:難しすぎる教材が多用される 対して、現代の学習設計では「思い出し・出力・間隔反復・負荷調整」の4原則が重視されており、これらはAIによる自動出題・進捗管理とも親和性が高い。 4. 制度設計や教育法との関係 この問題は、単なる学習法の流行に留まらず、教育制度や認知バイアスの設計とも関係が深い。たとえば、行政が推奨する学習政策や、文科省のカリキュラム設計においても、「楽に成果を出す」「ICTで解決」というスローガンだけが独り歩きすれば、再び似た誤謬が起こる。 したがって、制度設計にも「努力の見える化」「出力訓練の必須化」「科学的根拠の明示」といった原則が必要であり、これは学習法に限らず、教育政策・組織研修・キャリア支援制度などにも波及する視点だ。 5. おわりに 過去の奇妙な英語学習法は、その非科学性だけでなく、社会的・制度的文脈の中で理解されるべき問題である。学習者個人のリテラシーと同様に、制度設計側のリテラシーも問われている。技術と法、個人と社会の両面から、この問題を再考することが求められている。
CBT試験の増加希望|受験機会の拡大と技術者不足対策としての意義 近年、さまざまな資格試験においてCBT(Computer Based Testing)方式が導入されるケースが増えている。従来の「年1回・特定日・限られた会場」での受験スタイルから脱却し、「いつでも・どこでも・何度でも」とまではいかなくとも、柔軟な受験機会が得られるCBT方式への移行は、受験者にとって非常に大きな変化である。 IPA試験の先進的なCBT導入 代表的な事例として、情報処理推進機構(IPA)によるCBT化の進展が挙げられる。2011年にITパスポート試験でCBT方式が導入された。さらに2023年からは、基本情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験でも通年CBT受験が可能となった。 これにより、受験者は特定の試験日に縛られることなく、自身のスケジュールに応じて受験計画を立てることができる。技術職に就く社会人にとって、繁忙期を避けたり、学習の進捗に応じて柔軟に受験時期を調整できる点は極めて有利である。 電験三種もついにCBT化 「紙の国家試験」の象徴とも言える**第三種電気主任技術者試験(電験三種)**も、2023年度からCBT方式を導入した。この変化は非常に画期的である。 まず、年1回だった試験が年2回に増加した。さらに、従来は1日で4科目(理論・電力・機械・法規)を連続して受験しなければならなかったが、各科目を別日に分けて受験可能となり、精神的・身体的負担が大幅に軽減された。試験会場も全国約200箇所に拡大され、地方在住者の移動負担も緩和されている。 CBT導入の背景には、少子化による技術者不足への対応という側面もあったと推測する。インフラを支える電気系技術者の需要は今後ますます高まるが、試験のハードルが高く、また、採点の労力も高いままでは人材確保は困難である。CBT化は、技術者の裾野を広げる施策としても重要な役割を果たしている。 知的財産管理技能検定も全国展開へ 注目すべきもう一つの例は、**知的財産管理技能検定(知財検定)**である。2024年7月の第48回試験より、2級および3級にCBT方式が導入された。これにより、全国のテストセンターで受験が可能となり、これまで都市部に偏っていた受験機会が全国に広がった。 知財検定は、企業の研究開発部門や法務部門で重視される資格でありながら、地方在住者にとっては受験の機会が限られていた。CBT化によって、地方企業の社員や学生にとってもアクセス可能な試験となった点は高く評価できる。 CBT化は単なるデジタル化ではない CBT方式の導入は、単なる「紙からパソコンへの移行」にとどまらない。それは受験制度全体の設計思想をアップデートする機会でもある。受験者の多様なライフスタイル、地理的条件、学習ペースに対応する柔軟な仕組みが求められる現代において、CBTは最適な試験形態であると言える。 今後さらに多くの試験でCBTが導入され、「思い立ったときに受けられる資格試験」が当たり前になる社会の実現を期待したい。 IBT方式への期待と筆者の今後 加えて、CBTと並んで注目されるのがIBT(Internet Based Testing)方式である。これは自宅などからインターネットを通じて受験できる方式であり、試験会場への移動さえ不要となる。本人確認やカンニング防止の仕組みが整えば、さらに幅広い資格に導入されていく可能性がある。 筆者自身は、CBT試験は複数回受験しているが、IBT試験はまだ未経験である。今後、IBTによる受験環境が整えば、さらなる受験のしやすさを体験したいと考えている。 ところで、色彩検定はいつになったらCBT化してくれるのか。マークシート方式というだけで、今や受験する気が失せるこの頃である。
G検定を制度に導入する企業とは|三菱商事の例から広がりを探る 先日、「三菱商事がG検定を昇格要件に導入した」というニュースを聞いて、以下のような意見記事を書いた。 三菱商事が「G検定」を昇格要件に導入|AI人材育成の戦略とは? その後、G検定を何らかの制度に組み込んだ企業は他にもあるか気になり、過去のニュースを調べてみた。以下はその調査結果と、筆者の簡単なコメントである。 清水建設:建設業でもG検定取得を推進(2023年) 清水建設では2019年にAI活用の専門部署「AI推進センター」を創設し、G検定取得を目標とした社内研修を本格的に展開。4年間で研修受講者1,000人、G検定合格者300人以上という成果をあげている。 出典:G検定合格者300人以上を輩出 コメント:技術職に限らず、法務・総務など全社的な参加を促進している点がユニーク。受講者の中からAI活用に手を挙げる社員が現れるなど、社内における「気づき」や変化をもたらす好例といえる。 ソフトバンク:全社員の12%がG検定保持者(2025年) ソフトバンクは、AI人材育成を全社的に推進するため社内研修制度「ソフトバンクユニバーシティ」を中心に多層的な教育体系を構築しており、G検定の取得支援を重視している。2024年度末時点で**G検定合格者は2,200人以上に達し、全社員の約12%**を占める。20代に至っては5人に1人が取得しているとのこと。 出典:社員の8人に1人がG検定合格者 コメント:さすがに大手IT企業ということもあるが、想像よりも桁違いの取得者数であり非常に驚いた。三菱商事に関する意見記事でわたしは、万人が持つべき資格なのが疑問を呈したものの、他企業がこれだけ有資格者を保持していると、地力が全然異なるので、競業他社は追従せざるを得ないのでは?という印象だ。 まとめ:昇格要件はまだ少数派だが、制度化の動きは進行中 ニュースを隈なく調べた訳では無いが、一企業でも桁違いの資格取得者数を輩出している事例があり、企業の取り組みの本気度が窺えた。三菱商事のように、G検定を昇格要件とまでしている企業は珍しいと推測するものの、各社ともに**「AI人材育成」「DX推進」の文脈で、G検定の取得を制度として導入・推奨している事例**は着実に増えている。 企業ごとの導入レベルには温度差があるが、G検定が単なる資格ではなく、組織におけるデジタル基盤形成の指標として見なされ始めているように思える。 今後のニュースもチェックし、事例を追記していきたい。
6割取る学習の是非 試験において、合格基準が「6割」とされていることは多い。たとえば応用情報技術者試験、電験三種、大学の単位認定など、さまざまな分野の試験で「60点以上で合格」という基準が設けられている。この数値を見たとき、多くの受験者がこう考えるだろう。 「じゃあ、6割を目指して学習すればいいんだ」 これは一見合理的な戦略に見える。最小限の努力で最大の成果を得るという発想だ。しかし実際には、この「6割取る学習」は、きわめて危うい戦略である。以下、その理由を述べていく。 点数は常にぶれる 試験というのは、運や環境要因、当日の体調、緊張など、様々な外的要因に左右される。試験本番で「持っている実力のすべてが出せる」人間はごく少数であり、むしろ本番では「実力の8割程度しか出せなかった」と感じる人が大半である。 このとき、**知識として8割を習得していれば、当日の実力が8割しか出なくても、0.8×0.8=0.64で64点となり、6割合格基準を超える。**これはあくまで感覚的なモデルにすぎないが、非常にわかりやすい安全圏の設計方法だと言える。 参考書に書かれる「6割取れ」への違和感 世の中には、「試験は6割取れればいいのだから、6割を目指して効率よく学習しよう」と書いてある参考書や講義が少なくない。しかし筆者にとって、そのような発想は違和感がある。 確かに、全体の学習量を抑えて早く試験勉強を終わらせたいという気持ちは理解できる。実際、「満点を目指して時間切れで全範囲を終えられなかった」という受験者もいるだろう。そうした受験者への反省として、「6割取れればいい」という指導方針が現れたのかもしれない。 しかしながら、「試験範囲全体を学習する」ことは大前提であり、それをやった上で「8割程度を目指す」ことは、むしろ標準的な構えだと考える。 学習量の差はそこまで大きくない 筆者の考えでは、難関資格(弁護士、医師など)を除けば、「6割を目指す」学習と「8割を目指す」学習の間には、せいぜい2〜3割程度の学習量の差しかない。たとえば学習期間が2ヶ月だとしたら、それに+2週間ほどで到達できる範囲である。 その程度の差で「合格の安定性」を買えるのならば、次回の受験まで1年待つリスクと比較しても、明らかに前者のほうが合理的ではないだろうか。 「6割でいい」は甘えか、それとも戦略か? もちろん、すべての人にとって「8割を目指す学習」が常に正しいとは限らない。人生には時間的・経済的制約があるし、「まずは合格ラインに達すること」を最優先とする戦略もあり得る。 しかし、試験の本質は「知識・技術を身につけたことの証明」である。合格ラインぎりぎりの学習では、試験後の実務や応用に耐えられない可能性がある。 受かるための学習ではなく、合格後に役立つ学習を心がけるならば、なおさら8割を目指す意味は大きい。 資格試験は「戦略ゲーム」のように見えて、実は非常に“誠実さ”を問われる営みだ。合格という結果を安定的に手にするためにも、「6割でいい」ではなく、「8割を取る」という姿勢で取り組むことを、ぜひおすすめしたい。 なお、筆者自身もこの「8割習得」を基本方針としているが、それでもうまくいかないことはある。たとえば知財検定2級はその代表例である。この資格は、そもそも合格基準が8割という非常に厳しい試験であり、筆者は過去問で9割5分正解できる状態まで学習を仕上げたものの、本番では**77.5点(1問2.5点)**を取り、たった1問の差で不合格となってしまった。 このように、「+2割」を目標とする学習には、それ相応の覚悟と精度が求められる。戦略としては妥当でも、現実には困難を伴うこともある——それでもなお、「8割を目指す」という姿勢こそが、長期的な実力の安定に通じる道だと信じている。
Ankiのすすめ ― 忘却に抗う最強の学習ツール もう覚えられない、と感じたことはないか どれだけ時間をかけて勉強しても、数日後には驚くほど内容を忘れてしまう。そんな経験は、多くの人にあると思う。人間の脳は、放っておくと本当にすぐに忘れてしまう。 自分は昔からそういうのが気になって、大学受験のときに「エビングハウスの忘却曲線」を本で読んで知った。知ったのはいいが、当時はスマホもない時代で、全部手作業で管理しようとしていた。ノートの右上に日付を書いて、「このノートは3日後、7日後、14日後に見返す」みたいなスケジュールを作って、ファイルで管理していた。でも、これがとにかく手間で、しかもやっていても途中で見返し忘れたりして、結局途中でやめてしまった。 今の時代、そんな煩わしいことを自動的にやってくれるツールがある。Ankiだ。 Anki公式サイト 30代からの勉強と、Ankiの効果 他の記事でも、30代になってから資格学習を始めたことを書いたが、大学受験・大学時代の学習から時間が経っており、記憶力の衰えに不安を感じていた。「20代の頃より覚えが悪くなっているかもしれないな」と思いながら、何か補助になるツールはないかと探していてAnkiに出会った。 やはり科学的に理にかなった学習方法というのは効果が凄まじく、さほど苦労せずに記憶の定着化が進んでいる。Ankiを使い始めたのが、2024年7月2日で、現在は2025年5月12日。あと2か月ほどで1年になる。現在のAnkiカード枚数は以下図の通り。効果が目に見えて感じられるので、飽きずに続けられている。 Ankiの習慣化 今では、朝起きたらAnkiを開いて復習するのが完全に習慣となっている。強制的に学習しなければいけないカード数が表示されているので、翌日にスキップした時のノルマのプレッシャーを感じると、朝に優先してやらなければならないと感じている。これに慣れたら、むしろ復習しないと一日が始まった気がしなくなった。連休のときも「今日はAnkiやらないといけないから、遠出はやめとこうかな……」と思ってしまうくらいで、自分でもちょっと中毒気味だと思っている。 入力が面倒? でも結局それが一番ラク おそらく、Ankiの使用に一番躊躇う点があるとすれば、いちいちカードを作ってインプットしていく点だろう。自分も最初は面倒に感じた。けれど、やってみると意外と気にならなくなる。むしろその入力作業が学習になっていて、「あとでこれを思い出すときに役に立つな」と思いながらカードを作っている。 大学時代に経験したのは「一夜漬けで乗り切ったけど、半年後にはきれいに忘れている」というパターン。これを何度も繰り返してきた。そういう学び方は、結局将来に残らない。Ankiはそういう“学び捨て”を防いでくれるツールだと思う。 少し手間でも、一度カードを作れば、あとはAnkiがスケジュールを管理してくれる。自分で日付を書いていた頃と比べると、雲泥の差だ。 Ankiは、未来の自分への投資 これからAnkiを使ってみようかなと思っている人には、「とりあえず一週間だけでも使ってみて」と伝えたい。使えばすぐに「これは手放せない」と思うようになるはずだ。 記憶に自信がない、何度やっても覚えられない、でも本気で何かを身につけたい——そう思っている人にこそ、Ankiは向いている。 忘れるのは仕方ない。でも、思い出せる仕組みを持っていれば、それで十分だ。Ankiはその仕組みをくれる、頼もしいアプリだと思っている。
常識で問題を解くことの危うさ 資格試験の勉強法を紹介する本やブログで、時折見かけるアドバイスがある。 「この問題は常識で解ける。だから学習の優先度は低い」 この種のアドバイスは、一見すると合理的に見える。だが、その裏には大きな落とし穴がある。 「常識で解ける問題=学ばなくていい」は本当か? たしかに、勉強が苦手な人にとって、すべての問題を一から丁寧に理解するのはハードルが高い。その意味では、「常識で解けるなら、そこは飛ばしてもいい」というアドバイスが成り立つこともある。だが、それはあくまで初心者向け、もしくは「資格を持ってさえいればよい」「内容はぶっちゃけどうでもいい」と考えている人向けの話だ。 専門性を求めたり、学んだことを実務で生かしたいと考えるならば、「常識だから」という理由で学びを止めてしまうのは、非常に危うい態度だと言わざるを得ない。 常識という言葉の曖昧さと危うさ そもそも「常識」という言葉自体が危うい。技術者や専門職であれば、この言葉を安易に使うことのリスクを理解しているはずだ。なぜなら、組織とは多様なバックボーンを持った人間の集まりだからだ。メーカーであれば、機械出身、電気出身、情報出身、化学出身、材料出身など、さまざまな専門家が同じ職場で働いている。 たとえば、「金属組織なんて見分けがついて当然でしょ?」「強電・弱電という言葉も知らないの?」といった発言が、同じ分野出身者同士の会話であれば通用するかもしれない。しかし、異分野の人間に対してそれを求めるのは酷であり、非合理的でもある。 新たな分野を学ぶとは、常識を捨てること 本質的に、学習とは「常識の殻を破る」行為である。自分が持っていた先入観をいったん脇に置き、その分野における新たなスキーム、ルール、論拠を丁寧に学び取ることこそが、学習の本質だ。 にもかかわらず、「これは常識でA!」→「解答を見たら正解してた」→「はい、もうこの問題は解かなくていい」という態度で学びを進めると、一体何のために学習しているのかがわからなくなる。そんな態度で合格できたとしても、それは単なる“試験対策の通過”でしかない。 たとえば宅建の民法でよくあるのが、「先に買った人がかわいそうだから、その人が所有権を得るべき」という“常識”で答えてしまい、登記の対抗要件を無視して誤答するケースだ。実際には、**不動産の権利移転は登記がなければ第三者に対抗できない(民法第177条)**という明確なルールがある。 こうした例では、「常識で答えられたからOK」としてしまうことで、肝心の知識の獲得を避けてしまう点にある。 常識を捨て、論拠に立脚する 学習において大事なのは、論拠を求める態度である。その分野における原理・法則を理解し、細かな条件設定や例外に対しても、適切な判断ができるようになること。それが本来の学びであり、実務や応用の場面でこそ生きてくる。 「常識」という名のアナロジーに頼っているうちは、実は何一つ理解していないに等しい。なぜなら、論拠に基づいた推論ではなく、自分の経験やイメージに頼った“勘”で解いているにすぎないからだ。 さらに言えば、学習を始める前の段階の人(=一般の人)が、「これは常識でしょ」と豪語し、問題を解けたつもりになってしまう場合、それは将来的に極めて危険な兆候である。なぜなら、もしその人がそのまま専門家として開業した場合、「一般の人」と同じレベルの判断しか下せないことになる。そんな専門家が本当に社会に必要だろうか? それこそ、生成AIやルールベースの自動化に簡単に置き換えられる人材ではないだろうか? まとめ:理解の深度こそが武器になる 常識で解けたとしても、それがなぜ正解なのかを考えること。その積み重ねこそが、専門家としての地力を育てる。 「常識で解けるから飛ばしていい」という言葉を見たときは、それが誰に向けた言葉かを考えたい。そして、自分が本当に目指しているものは“合格”か“理解”か、自分自身に問い直すことから始めてみてほしい。
2025年機械系資格カレンダー 2025年に実施される/された、主要な機械系資格試験のスケジュールをまとめた。機械系資格一覧については、以下記事でもまとめてある。 機械系資格一覧 電気系資格(電験三種・電気工事士)にも興味がある方は、以下を参照のこと。 2025年電気系資格カレンダー 資格別スケジュール詳細 計算力学技術者(固体力学/熱流体力学/振動) 1級 【実施日】未公表(2024年は11月29日) 【申込期間】未公表(2024年は7月23日~8月8日) 【主催】日本機械学会 【形式】CBT 計算力学技術者(固体力学) 2級 【実施日】未公表(2024年は12月6日) 【申込期間】未公表(2024年は7月23日~8月8日) 【主催】日本機械学会 【形式】CBT 計算力学技術者(熱流体力学/振動) 2級 【実施日】未公表(2024年は12月5日) 【申込期間】未公表(2024年は7月23日~8月8日) 【主催】日本機械学会 【形式】CBT 2次元CAD利用技術者 1級(機械) 【実施日】前期:6月15日、後期:11月9日 【申込期間】前記:4月7日~5月8日、後期:8月18日~9月18日 【主催】コンピュータ教育振興協会 【形式】実技+筆記 2次元CAD利用技術者 2級 【実施日】随時実施(申し込み時に任意選択) 【申込期間】随時 【主催】コンピュータ教育振興協会 【形式】CBT 3次元CAD利用技術者試験 1級/準1級 【実施日】前期:7月20日、後期:12月7日 【申込期間】前記:5月9日~6月12日、後期:9月29日~10月30日 【主催】コンピュータ教育振興協会 【形式】実技+筆記 3次元CAD利用技術者試験 2級 【実施日】随時実施(申し込み時に任意選択) 【申込期間】随時 【主催】コンピュータ教育振興協会 【形式】CBT QC検定 1級/2級 【実施日】9月28日 【申込期間】6月2日~7月18日 【主催】日本規格協会グループ 【形式】筆記 QC検定 3級/4級 【実施日】6月23日~9月28日 【申込期間】5月8日~8月24日 【主催】日本規格協会グループ 【形式】CBT